新TOEIC®について

TOEIC(R)の形式変更が発表された。
公開テストで2006年の5月から、IP団体受験は2007年から実施となる。
変更点など細かいことについては、公式ホームページを見ればわかるので
ここでは詳しく触れない。

本コラムでは新形式のサンプル問題を実際にやってみた感想を述べてみたい。

(1)題材は変わらない

これまで同様ビジネス現場を中心にした場面が採用されている。
したがって、従来どおりの語彙傾向を踏襲。また題材も従来と変わらないので、
ここ数年公開テストで使用された問題がある程度使われると予想される。
過去十年ぐらいに遡って使われていた問題も使用される可能性もある。
とにかくTOEIC(R)は同一問題を使い回しするので可能性がゼロではないだろう。

(2)形式に変化

リスニングの説明文問題、リーディングの読解問題の数が増えるので
長文に比重が移る。さらに会話問題も従来より長めになる。
ただし問題の難易度やクセは従来どおり。
リスニングは後半の会話問題、説明文問題が設問3問に固定され、
また設問も読み上げられる。
この設問数が固定したことで、事前に何題の設問に目を通しておけば
よいか判断がつくので、練習はやり易くなった。

リーディングはPart VIの間違い探しがなくなるのが痛い。
ほぼパターンも割り出され、一番確実にスコアが狙えるところだった
だけに悔やまれる。
新形式のcloze passageは、より語彙力、コロケーション、熟語の知識など  
が問われるようになるだろう。従来のように下線部の形だけ見ればすぐに答えが
出せて、全文を読んだり、意味を考える必要がないという問題ではなくなる。
ただし問題数が12問と少なくなるので、負担は減る。
最後の読解がさらに難関に。従来はすべて1つの文書を読んで設問という
構成だったが、新テストでは2つの文書を読んでというのが追加される。
しかもおよそ半分はこの形式。読むスピードが遅い人には、頭が痛くなり
そうだ。

(3)音声に変化  

従来の米語に加えて、カナダ、オーストラリア、イギリス、ニュージランドの
発音が使われる。ただし、試験なので、聞き取りに難を覚えるほどのアクセント
ではないはず。かえって、その音声的特長から日本人にはすんなり耳に入ってきて
聞きやすいかもしれない。
それほど神経質になるほどのことでもないだろう。
これに、インド、シンガポール、フィリピンの英語が入ってきたら話は別だが。

(4)難易度

ETSの発表では多少形式に不慣れなためスコアが下がる可能性もあるが、
「いちおう現行テストで600点の人は、実力が適正に発揮できれば新テスト
でも600点になるよう設定されている」とのこと。
だが現行600点の人は新テストで600点はしばらくは無理だろう。
少なくとも2,3回の受験ではちょっと厳しい。
問題形式に慣れるまでの時間がけっこうかかりそうなのと、
測定能力の幅が今回の新テストで広がったので、多くの人が
誤差の範囲を下回って得点がでる可能性が大。
リスニングの設問3問固定がどのように影響するのか興味がある。
Part IVはともかくとして、Part IIIが果たしてどうでるか。
現行テストでは短いながら30題の会話を聞かなければならなかったが、
新テストでは10題でいい。このあたり微妙に影響してきそうだ。
特に730点以上の上級者たちにとって。


というわけで、新テストはさらなる大きな変更の前ぶれだろう。
どれくらい先かは不明だがいずれスピーキングが導入されるはず。
TOEFL(R)がそうであったように。

より小手先の技術ではどうしようもないEnglish proficiency(英語能力)
がしっかり試される時代がもうすぐそこまで来ていると言っていいだろう。


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チーフコーチ 兼 特別講師

高橋基治(東洋英和女学院大学助教授)